ししゃも子爵は、ししゃもの貴族だった。
しかし、人間の乱獲で年々減っていく仲間の数に心を痛めていた。
「これは抗議しに行かねばならない」
「人間は狡猾だから、うかうかしていると食われてしまうぞ」
「注意していてもどうせ食われるのだ」
ししゃも子爵は先頭に立って、東京に向かって泳いだ。
東京に来た子爵はすぐに人権擁護団体のメンバーとコンタクトできた。
「これは人権の蹂躙だ!」と子爵は訴えた。
「お話しは良く分かりました」
子爵が案内されたのは厨房だった。そこで子爵と一行は美味しく料理され、みんな食べられてしまった。なぜって? 人権擁護団体は人の権利しか守る気が無かったから、魚は食べてしまったのだ。
(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)