2012年08月23日
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三百字小説『ししゃも子爵』

Written By: 遠野秋彦連絡先

 ししゃも子爵は、ししゃもの貴族だった。

 しかし、人間の乱獲で年々減っていく仲間の数に心を痛めていた。

 「これは抗議しに行かねばならない」

 「人間は狡猾だから、うかうかしていると食われてしまうぞ」

 「注意していてもどうせ食われるのだ」

 ししゃも子爵は先頭に立って、東京に向かって泳いだ。

 東京に来た子爵はすぐに人権擁護団体のメンバーとコンタクトできた。

 「これは人権の蹂躙だ!」と子爵は訴えた。

 「お話しは良く分かりました」

 子爵が案内されたのは厨房だった。そこで子爵と一行は美味しく料理され、みんな食べられてしまった。なぜって? 人権擁護団体は人の権利しか守る気が無かったから、魚は食べてしまったのだ。

(遠野秋彦・作 ©2012 TOHNO, Akihiko)

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